生成AIの使い方には、3つの段階がある

はじめに

生成AIを使っていますか、と聞くと、多くの会社が「使っています」と答えます。

文章のたたき台を作らせる。メールの下書きを書かせる。議事録を要約させる。たしかに便利です。時間も浮きます。

でも、そこで止まっている会社がとても多い。そして止まっている理由は、能力でも予算でもなく、「その先があると知らないから」だと思っています。

今日はその話を書きます。

第1段階 書かせる 第2段階 自分の環境で作る = 手触りを持つ 第3段階 外とつなぐ = 流れを設計できる 多くの会社はここで止まる

第1段階:AIに、考えさせる/書かせる

いちばん入りやすいところです。ChatGPTやGeminiに聞いて、たたき台を作ってもらう。

  • 提案書の構成を出してもらう
  • 断りのメールの文面を考えてもらう
  • 長い資料を要約してもらう

これは十分に価値があります。ゼロから書く時間がなくなるので、確実に速くなる。

ただ、この段階の特徴は、毎回、人が使いに行っていることです。AIは待っています。人が開いて、打ち込んで、結果を受け取る。人が動かないと、何も起きません。

だから、浮くのは「一回あたりの時間」だけです。仕事の流れそのものは、変わっていません。


第2段階:自分の環境の中で、動くものを作る

ここが、多くの会社が飛ばしてしまう段階です。

AIに文章を書かせるのではなく、AIの助けを借りて、自分の環境で動くものを作る。

私が最初に作ったのは、こういうものでした。

Webサイトの内容を拾ってきて、スプレッドシートに記録する

それだけです。壮大なシステムではありません。GAS(ガス)というもので書きました。

GASは Google Apps Script の略で、スプレッドシートやGmailを自動で動かすための仕組みです。名前は難しそうですが、正体はこういうものです。

  • Googleアカウントがあれば、追加費用なしで使える(すでに入っている)
  • スプレッドシートのメニューから開ける。インストールも申請も要らない
  • 「毎朝8時に実行」のような予約ができる。パソコンを開いていなくても動く

要は、Excelのマクロのようなものだと思ってください。それがGoogleのサービス全体(メール、カレンダー、フォーム、スプレッドシート)に対して使える、というイメージです。

大事なのは、作り方です。私はプログラムに詳しいわけではありません。

やったことは、こうです。

  • 「こういうことをしたい」と、生成AIに相談した
  • 出てきたものを動かしてみた
  • 詰まったところを、また生成AIに相談した
  • それを繰り返して、動くところまで持っていった

つまり、第1段階のAIを使って、第2段階に登ったということです。第1段階は無駄ではありません。使い道を「文章を書かせる」から「作るのを手伝わせる」に変えると、階段になります。

「うちはGoogleじゃない」という場合

GASの話をすると、「うちはMicrosoftなので」と言われることがあります。同じことは、たいていの環境でできます。

  • Power Automate:Microsoftに標準でついている自動化の道具です。「メールが届いたら」「ファイルが追加されたら」をきっかけに、次の動作をつなげられます。画面上で部品を並べる形なので、文字を書かなくても組めます
  • Excelのマクロ(VBA):昔からあるものですが、いまも現役です。Excel作業の自動化なら、これで足りることも多い

選び方は単純です。いま会社で使っているものに、最初から付いているものを選ぶ。

新しく契約すると、稟議が要る、管理者に頼む、費用の説明が要る——それだけで止まります。すでに使えるものなら、今日から触れます。

道具はどれでも構いません。大事なのは「AIに相談しながら、動くものを1つ作る」という経験のほうです。 ここで得た手触りは、道具が変わっても持ち運べます。

同じ生成AIでも、使い道を変えると残るものが変わる 文章を書かせる 聞く → 受け取る → 貼る 残るもの:文章 次も、人が使いに行く 作るのを手伝わせる 相談 → 動かす → 詰まる → また相談 残るもの:動くしくみ 次からは、人が動かなくても回る

そして、この段階を通ると、決定的に変わることがあります。手触りを持てることです。

何ができて、何ができないか。どこが大変で、どこは簡単か。触っていない人には、この感覚がありません。


第3段階:外のシステムと、つながると分かる

私が「あ、これ自分でもできるな」と思った瞬間は、ここでした。

自分が作ったものを、別の管理システムとつなげられると分かったんです。

これが分かった瞬間に、絵が一気に描けるようになりました。たとえば、こういう流れです。

  1. お客様からメールが来る(これが引き金になる)
  2. 別の管理システムを見に行って、その方の状況を確認する
  3. 内容を判定して、返す内容を用意する
  4. 最後に、人が確認して送る
つながると、こういう流れが組める メールが届く = 引き金 別のシステムを見る 状況を確認 判定・下書き 内容に合わせて 人が確認して送る 最後は人 ここまでが自動 判断は人が持つ 部品ひとつひとつは難しくない。 ただし「つながる」と分かっていないと、この絵は描けない。

これ、それぞれの部品は難しくありません。でも、つながると分かっていないと、この絵は描けないんです。メールはメール、管理システムは管理システム、と別々のものに見えているうちは、思いつきもしない。

そして重要なのは、第2段階を通っていたから、第3段階が分かったということです。

GASで作った手触りがあったから、「外とつながる」の意味が実感として理解できた。触っていなかったら、同じことを聞いても素通りしていたと思います。


なぜ、多くの会社は第1段階で止まるのか

理由は3つあると思っています。

① そもそも発想がない。 その先があると知らない。AIは文章を書く道具だ、という理解のまま止まっている。

② できるかもしれないが、やり方が分からない。 方向は見えている。でも、最初の一歩が分からないまま時間が過ぎている。

③ 昔の記憶で判断している。 この手の仕組みは、かつては技術者や開発会社に頼むものでした。見積もりを取って、要件を出して、それなりの金額をかけて作る。その記憶があるから、「うちには無理だ」と最初から外してしまう。

③が、いちばん根深いと感じます。判断の材料が、何年も前のまま更新されていない。

私も同じでした。手を動かしてみたら、思っていたよりずっと手前に線がありました。


何から手をつけるか

第2段階に上がるための、いちばん小さい一歩を書きます。

作るものは、これくらいの規模でいい

私が最初に作ったのは「Webの内容を拾ってスプレッドシートに記録する」でした。この規模でいいんです。むしろ、これくらいでないと最後まで届きません。

たとえば、こんなものです。

  • 毎朝、特定のメールを拾ってシートに一覧化する
  • 定期的にあるページを見に行って、変化があったら記録する
  • 提出物の締切が近い人に、自動でリマインドを送る

業務が劇的に変わるものを最初に選ばない。動くところまで到達することが目的だからです。

そして、プロンプトはこれで足ります

難しく考える必要はありません。生成AIに、こう書いて渡せばいい。

【作りたいもの】
毎朝、Gmailに届く「注文確認」のメールを自動で拾って、
スプレッドシートに一覧として記録したい。

【いま困っていること】
手作業で1件ずつ転記していて、毎朝30分かかっている。
転記ミスも時々起きている。

【こうなれば使いやすいと思う】
日付・送信元・件名・金額が、1行ずつ並んでいる状態。
既に記録した分は、二重に登録されないようにしたい。

【環境】
Google Workspace を使っている。プログラムの知識はない。
この環境で作れる方法を、手順を最初から教えてほしい。

この3つが書いてあれば十分です。

  • 作りたいもの
  • いま何が問題なのか
  • こうなれば使いやすくなると思う

きれいな要件定義書は要りません。むしろ、問題と希望を素直に書くほうが、いいものが返ってきます。 詰まったら、エラーの文言をそのまま貼って「これが出ました」と聞けばいい。

【環境】のところは、自社のものに書き換えてください。「Office 365を使っている」「kintoneを使っている」でも構いません。その環境でできる方法を、AIの側が選んでくれます。


まとめ

生成AIで文章を書かせているのは、第1段階です。悪いことではありません。ただ、そこには「一回あたりの時間が浮く」以上のものはありません。

第2段階は、自分の環境で動くものを作ること。ここは、生成AIに相談しながらで十分たどり着けます。

第3段階は、それが外のシステムとつながると分かること。ここまで来ると、仕事の流れそのものを設計できるようになります。

そして第3段階は、第2段階を飛ばしてはたどり着けません。 触っていないと、つながることの意味が分からないからです。

小さくていいので、一つ作ってみてください。Webの内容をシートに記録する、それくらいで十分です。線は、思っているより手前にあります。


どこから作り始めるか、何が自社に向いているか。整理の段階からでも構いません。お気軽にご相談ください。

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